【かんかん橋をわたって】という怪物漫画
ある日、ゲームまとめサイトを見ていたら、
ふとWEB漫画の広告が目に留まった。
こういう感じのやつ
どうやら所謂
『嫁姑もの』なるものに見えた。
僕はゲイだし、主婦の気持ちに今後立てることは一生無いんだけど、仕事のストレスが溜まったら鬼女まとめのスカッとした話や、嫁姑の確執バトルといった文章をよく読んでいる。
生まれた環境、年齢、風習など、様々なものが異なる同性同士。他者の助言で容易に解決できるものは滅多になく、ああ、しがらみながらもなんとか折り合いあいをつけて、生きていかないとなんだよな…と主婦達の書き込みを見て思うのだ。
で冒頭の漫画。タイトルは
『かんかん橋をわたって』
そこはかとなくNHK朝の連続テレビ小説を感じさせるタイトル。橋にまつわるエピソードを絡ませながら嫁姑問題を解決だな、とその時はふんわり予測を立てていた。
軽く感想サイトでも見るか…と流し見したところ、疑念が生じてこの漫画ってどういう漫画?というような内容をツイッターで呟いたところ、
『バトルもの』
『掲載誌を間違えた怪物漫画』
『少年ジャンプの三大要素全てがある』
『クレイモア』
など、予想を裏切る感想が飛び込んでくるではないか。なんだろう、なんなのだろうこの漫画は…。まずは試し読みの1巻を読んで、続きを購入するか検討してみよう…。
姑(不二子)がいる二世帯住宅で生活する主人公(萌)、鈍感そうだけど良い人そうな旦那、少しとっつきづらい小姑。嫁いびりも
『萌がセットした米をパサパサにさせる』
『萌によそう米は茶碗でこそぐ』
といった、うんうん…そう、この味よね…という設定。嫁姑テンプレでも様式美といったところ。萌は持ち前の明るさと根の強さで近所からのおばさん達からもサポートを受けながら、立ち向かっていく…で1巻が終わる。
ように思えたところ、1人の主婦(権土木)からと不穏な会話から風向きが変わる。
『あなた 今 4位よ』
『いったいなんの話?』
『嫁姑番付よ』
???嫁姑番付って、なに???
ということで!
読んでない人、ここから下はある程度のネタバレあるので読んだ人、もしくは読んでないけど気になる…て人はどうぞ !
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
全60話。
あとセリフが多いので1話結構長い。
のに、
休日に全話読んだわ。
なんだこの漫画…。
あと、上の方に書いてた人たちの感想
全部合ってたわ!
その通りだわ!
えーっ、ビックリした…ここ最近だと、『カメラを止めるな』を観た時の感情に近い。
こういうジャンルだと『まぁこのあとどうせこうなるよね』っていう、
作品を舐めた態度
を見事に引っ叩いてくれる。自戒も含めて書くけど、展開を先回り予測すると、色々面白い作品見逃していくな~って。
サメものだと『シャークネード』、ゾンビものだと『カメラを止めるな』みたいな、そういう固定概念をぶっ壊していう作品は、これからもまだまだ出てくるだろうし、そしてこれまでも沢山出てんだよなぁ。て、2018年の9月は作品に対する態度を改める良いきっかけの月になった。
ひとまず、全巻読んだ上での話の大まかな流れを書くね。
嫁姑番付という、『嫁姑の不幸レベル』が可視化された町、川東。『川東いちのおこんじょう』と呼ばれる不二子を姑にもつ萌は、判定の結果4位であった。姑からのイビリに抗う日々の中、他の番付達に興味を持った萌は衝突やトラブル解決等を経て、他の番付達との絆を深めていく。大勢の仲間達を引き連れた萌は、この町を支配する番付1位姑『ご新造様』にどう立ち向かうのか…?
これどの雑誌で読みたいかっつーと…
ジャンプだわな。
これ、連載?されてた時、世の主婦達はどういう感情で読んでいたんだろう。まんがタイムきららでベルセルク載ってるみたいな…。
『待ちきれないわ~!まさか5位があんなことになるなんて~』
『ですわよね~!私5位視点のスピンオフ読みたい~!』
『ダブルヒーローシステムですわよねこの漫画。侮れないわ』
とか井戸端会議でやってて欲しい。
この漫画、嫁姑いびりはホント最初の頃だけでいわば序章に過ぎないのよね。簡単にまとめてみると
・嫁姑編
・番付編
・おこんじょう継承編
・絶望編
・最終決戦編
こんな感じ。ちょっとした異能力バトルに、そのまんま通用する。こうして見ると、ある程度プロットが完成した状態で、連載した作品なんだな~と思う。絶望からの再起とか胸熱だよ。さて、以下は各編の感想をざっくり書いていくね。
・嫁姑編
ここはなんというか、古文なんだよね。もうルールに従って、嫁姑バトルを描いてる感じ。ここは別に変にいじらなくても、というか世の主婦達が読みたいのは『これ』だからなって。基本地味だけど嫌なことを連発してくる姑に、持ち前の明るさと愛嬌で頑張るぞッ!て。ていうか旦那よ、嫁の茶碗めっちゃ汚いご飯のよそわれ方してるの気づけよ。そういう鈍いとこが、結構主婦の危機でよく取り扱われるとこよね。
この鈍さが仇となり、
絶望編では夫、
廃人になるんだけど、サ!
・番付編
序列4位という、なんとまぁ主人公ぽい微妙な立ち位置。でもこの番付システム、基本的に更新はされない、つまり倒して順位を塗り替えていかないので話のキモとしては、その人が○位で、何故不幸なのかを説明していくところ。ただそうなると、順位違うんじゃね?て思う人がちらほら。
5位の権土木さん、
寝るところ廊下よ?
羽川翼じゃん。
子供は姑に洗脳されてて、夫は良き理解者どころか趣味の世界にどっぷりだし。ともあれ、なんやらかんやらあって主婦友達が少しずつ増えていく、ある程度平穏な時期。2位と1位はこの編では不登場。3位以下の不幸さとは天と地ほどの違いがある。だからこそ、ここで読むの切るのは勿体ない。
1位、マジやっべぇから。
他の順位の人たちも魅力的な人たち盛りだくさんで、各々最終決戦編では見せ場あるから、好きキャラ決めて読むのもいいかもしんない。僕は6位。
・おこんじょう継承編
姑のようにはなりたくない!で思っていたのに、いびられ続けた結果不二子の精神に支配されていた…と萌が自覚し発狂するシーン、
大爆笑しちゃった。
なんの漫画読んでんだよって。
姑対策の為に姑の生態を理解したら、自分が姑そっくりに…。不二子のおこんじょう…怖いところというか強いところって、人身掌握力と扇動力にステータス極振りしてんのね。
『いかに自分がリスクをおかさず他者を利用出来るか』
を萌も習得しちゃって、仲間(他の番付)達も怖がっちゃう。不二子はそこも含めて計算づくでいびり続けていた。
彼女には一つの大きな使命がある…
その為にも『自分の分身』になれるよう、
萌をリビルドする必要があったのだ…
来るべき”厄災”に備えて。
・絶望編
2位との邂逅。割とヘビーよりの嫁姑のイザコザだから、長期化すんのかなー?て思ってたけど強化版萌と不二子の手にかかればってなもんで、夫婦姑みんなスーパーハッピーエンド!と思いきやの1位姑『ご新造様』ことトキ子の怒りに触れてしまったが為に…
嫁は幽閉され、
1位の夫と結婚(再婚)の準備
旦那とは強制的に別離
家は更地になりました
おおよそ日本では考えられないことが起こる。日本…じゃないのかもしれない。ネオ日本なのかも。多分そう。
序列1位のトキ子。無数にあるヒューマンドラマ作品の悪人レベルでは、恐らくかなりの上位に食い込むと思う。最凶にして最恐にして最狂。
町で男の子が生まれたら名付け親は『ご新造様』。名付けられた男の子が結婚したら…
『ご新造様』がその家の”姑になる”。という、イカれたパブリックドメイン能力をいかんなく発揮。強大なコネクション・財力があるため、逆らうものには町の市場を閉鎖も容易というチートキャラ。
肝心の1位の嫁はというと旦那から切り離され人々が寄り付かない荒地に逃げ延び、
そこにある資材で藁小屋を建て、町人の情けで食材を提供され生きながられている。
もはや米のよそい方とか…
そんなん児戯よこれ。
あと1位の不幸さが極まっているのは『旦那を愛しているからこの町を去れない』という呪いの影響もある。逃げな~!こんな町逃げなよ~!シムシティーでもこんな状況改善目指すモードね~から~!て読んでてずっと心で叫んでた。
そんなトキ子に、真っ向勝負を挑むことにした萌。結果は…これ、読んでない人はホント覚悟して読んでね。凄まじい絶望が萌に降りかかるから。あと夫廃人になるから。
そこはまぁ、
別にいいんだけど(鈍感過ぎるお前は~!)。
・最終決戦編
心が壊れてしまった萌
寄り添ってくれる番付嫁達。そして不二子が仕掛けた一縷の希望。嫁姑問題を経てぶつかり合った憎しみは、2人の鋼の結束へ。この狂った町を救い出すのは萌と不二子と、なにより番付の嫁達…。不二子のセリフが火種となる。決戦の幕開けだ。
『無策も極まれば上策となる。
愚かさも極まれば知にまさる。
それこそがトキ子の持つ恐ろしさの本質。
この私をして30年間対決をためらわせた理由がそこに。
だがしかし時は満ちた』
園子温監督、
映像化してくんねぇかなぁ…
一度戦線離脱するも、超強化され戻ってきた5位、明かされなかった9位という集合体が作り出す『ここは嫁だけしか知らない通路よ』、
睾丸クラッシャーと化す8位、
屈強な男衆を指先一つ触れることなく壊滅させる不二子、1位の嫁と姑の天上対決などと見所満載の最終決戦。これまでの積み重ねが収束していく展開の数々。『ここまで読んできてよかった…』と興奮しながら読了。
根本的な部分が解決してなかった部分があったり、更地になった2位の家は?とか6位はこれからどうなる?とか全部がスッキリ!てことではないんだけど、しがらみながらもなんとか折り合いあいをつけて、生きていかないとなんだよな…えっ、あれこれ冒頭で書いた事と全く同じ感情が湧き出してるじゃん。そう、やはりこの漫画の根源は嫁姑もの…!!すごい…!!兎に角後半からの展開が素晴らしいので、未読の方は是非読んでみてほしい~。さて、この漫画を一言で表すなら、で締めようと思います。
町内会のキル・ビル
終わりに
僕は普段、友達とラジオやってるんですがここでかんかん橋の良さを語ろうと思ったんですけど、あまりにも番組の趣旨と外れる上に、物凄い時間喋ってたので全カットと相成りました。ので、今回ブログにしてしたためようと思った次第です。家の近くに小石、置いたらダメだぞ!多分KindleとかAmazonとか携帯アプリ課金とか、色々読む手段あるので本屋にやければ電子版で読んでみてね。ここまで読んでくれてありがとう。
みんなで 『おこんじょう』身につけて、
世知辛い世の中、生きていこうな。
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— SRな池内 (@odakyusendekak1) April 7, 2019
コイツにこういうの書かせてみてぇ!みたいな素敵なサムシングございましたら、ひとまずはDMから! pic.twitter.com/0biBGgPjTU
面白い漫画あるので読ませてぇ~!みたいな依頼お待ちしてます
書いた人
@odakyusendayo
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